「返事がない」「話しかけても視線が合わない」「言葉が通じていない気がする」
発達障害のある子どもたちの中には、コミュニケーションに課題を抱えているケースが少なくありません。
今回は、言葉の遅れや会話のズレに悩む保護者の視点から、原因や対処法、自然療法の可能性について紹介していきます。
この記事の目次
発達障害とコミュニケーションの困難
―― 子どもたちの「伝えたい」を理解するために ――
発達障害のある子どもたちの中には、「うまく話せない」「会話がかみ合わない」といったコミュニケーションの困難を抱えている子が多くいます。とくに自閉スペクトラム症(ASD)や知的発達症の子どもたちにその傾向が見られます。
特徴として、以下のような様子が見られることがあります。
・ 話しかけても返事がない、言葉がなかなか出てこない
→ これは「言語発達の遅れ」が背景にあることが多く、言葉を理解したり、自分の思いを表現する力がまだ育っていない状態です。
• 言葉は話せるが、会話のキャッチボールが難しい
→ 相手の返事を待つ、質問に答える、話題をつなげるといった「双方向のやりとり」が難しいことがあります。
• 相手の気持ちや表情を読み取るのが苦手
→ 相手が怒っている、悲しんでいるといった“非言語的なサイン”に気づきにくいため、場にそぐわない言動になってしまうことがあります。
• 話題が一方的、興味が偏っている
→ 好きなテーマになると止まらず話し続けたり、会話の流れに関係なく自分の興味だけを語ることもあります。
「やる気の問題」ではなく、「脳の仕組みの違い」
このようなコミュニケーションの困難は、本人の「性格」や「やる気」「しつけの問題」と誤解されることがあります。ですが、実際は脳の情報処理の特性の違いによるものであり、決して本人の努力不足ではありません。
・ASDの子どもは、言語情報と非言語情報(表情・声のトーンなど)を同時に処理するのが苦手なことがあります。
・注意の焦点を「相手」ではなく「自分の興味や感覚」に向ける傾向が強く、他人とのやりとりに入りづらいこともあります。
・言語中枢の働きが未熟で、音としての言葉は聞こえていても、意味として処理するのに時間がかかるケースもあります。
まずは「わかりにくさ」を理解することから
コミュニケーションの難しさは、本人の内面にある「伝えたい」「分かり合いたい」という気持ちと、外の世界との“つながりの難しさ”のギャップからくるものです。
だからこそ、私たち大人が「どうしてこの子は話さないのか?」「なぜ言葉がずれるのか?」という“行動の背景”に目を向け、その子なりの伝え方・感じ方を受け止める姿勢がとても大切です。
コミュニケーション困難(発達障害)を抱える子供を持つ親の悩み

言葉がなかなか出ない、会話がかみ合わない——そんな子どもの姿に、保護者は深い不安と戸惑いを感じます。例えば・・・
• 同年代の子と比べて落ち込んでしまう
周りの子が当たり前のようにおしゃべりしているのを見て、「うちの子はどうして…」と焦ってしまう。
• 「このままずっと話せないのでは…」と将来が不安になる
保育園・幼稚園、小学校、就職や自立…。言葉が出ないことでこの先どうなるのか、不安が押し寄せてくる。
• 「自分の接し方が悪いのでは」と自責の念にとらわれる
「もっと語りかけたほうが良かった?」「愛情不足だった?」と、過去の育て方を振り返って苦しくなる。
こうした気持ちは、どの親御さんにも共通する“自然な感情”です。けっして一人ではありません。
言葉の発達は「マイペース」でいい
言葉は、単なる“音”ではなく、「脳・感情・身体・環境」すべての連携によって育つものです。発達障害がある子どもたちは、その連携がゆっくりだったり、独自の順序で育っていたりします。
でも、「今、言葉が出ていない=一生話せない」ということでは決してありません。
• 言葉より先に「安心できる関係性」から始まる
• 音や表情のやりとりが「通じ合う」感覚につながる
• 言葉ではなくても、子どもなりに伝えようとしているサインがある
こうした“小さなつながり”を見逃さず、焦らずに「その子のリズム」で成長を見守ることが、なによりの支えになります。
対処法① 言葉以外の“伝え合う手段”を活用
言葉が出にくいからといって、「伝えられない」わけではありません。言葉は“表現の一つ”にすぎず、他にもたくさんの方法でコミュニケーションは育てられます。
・ 絵カードや写真を見せて選ばせる
「おやつ食べる?」「トイレ行く?」など、イラストや写真を使えば視覚的に理解しやすくなります。
• YES・NOだけでも選択できるように
言葉が出なくても、うなずきや指さしなどで「意思表示」ができるだけで、世界とのつながりが生まれます。
• 指さしや音声ボタンで表現のチャンスを増やす
「これ!」と指を差す、ボタンを押して音を鳴らすだけでも、立派な表現です。「伝わった!」という実感は、自己表現の第一歩になります。
こうした“話せなくても伝え合える体験”を積み重ねていくことが、次の段階につながります。
対処法②「やりとりの楽しさ」を共有する
言葉の前に大切なのは、「人と関わることって楽しい!」という経験です。その“楽しい気持ち”があるからこそ、「もっと伝えたい!」という意欲が生まれていきます。
• 声のやりとり(おうむ返し・まねっこ)
子どもの声や音をそのままマネすると、「反応してもらえた!」という喜びにつながります。
• 表情あそび(変顔・笑顔)
言葉がなくても、表情のやりとりは立派な“感情の交換”。一緒に笑ったり驚いたりするだけで、心が通じ合います。
• 指差し・拍手・ハイタッチ
ちょっとした反応のやりとりでも、「コミュニケーションの土台」が育ちます。大切なのは、「できたこと」にしっかり喜び、反応を返してあげることです。
処法③「伝えたい!」という気持ちを育てる
言葉を引き出すより先に、「伝えたい」「かかわりたい」という気持ちそのものを育てることが何より大切です。
・子どもの好きなものを通して話しかける
電車が好きなら電車のおもちゃで会話を始めるなど、興味に寄り添うことで、心が開きやすくなります。
• 子どもの声や動きをまねて返す
「うー」と言ったらこちらも「うー」と返す。“共鳴する関係”が、安心と信頼のベースを作ります。
• 説明より“共有”を意識する
「教える」「理解させる」ではなく、「一緒に楽しい時間を過ごす」ことが最優先。まずは“心が通じ合う”経験を積むことで、自然と言葉への準備が整っていきます。
どの子にも、「伝えたいこと」はきっとあります。それをうまく引き出すには、言葉にこだわりすぎず、“心のやりとり”を大切にする関わりが鍵です。
自然療法の可能性

“言葉”だけでなく、“心の通じ合い”をサポートするやさしい選択。
お子さまの「ことば」の悩みを抱える保護者の方にとって、日々の心配や焦りはとても大きなもの。「何かしてあげたい」「でもどうすればいいの?」――そんな葛藤をやさしく受けとめてくれるのが、フランス式耳介療法(オリキュロセラピー)です。
この療法は、耳にある“反射区”をそっと刺激することで、脳や神経の働きをやさしく整える自然療法。フランスでは医療・教育の現場でも取り入れられ、子どもたちの感情の安定や、コミュニケーション力のサポートに役立てられています。
なぜ“耳”なの?
耳には、脳や内臓、自律神経に関係する無数のポイント(反射区)が集まっています。とくにコミュニケーションに関わる部分では、次のような効果が期待できます:
• 「言語中枢(ブローカ野)」や「前頭葉」に対応したゾーンへの刺激
→ 言葉の組み立てや表現を司る脳の領域に、間接的に働きかけます。
• 「神門」「情緒安定ポイント」を刺激してリラックスへ
→ 不安がやわらぐことで、表情や反応が豊かになりやすくなります。
• 痛みなく、家庭でも取り入れやすい
→ 貼るだけのシールややさしいタッチでできるので、毎日の生活に負担なく取り入れられます。
“言葉が出る”その前に——準備が整う感覚を育てる
大切なのは、言葉そのものではなく、「つながりたい」という心の準備。この療法は、お子さまのペースに寄り添いながら、内側から「伝えたい気持ち」を育てていくサポートになります。
「なんだか目が合う時間が増えた」
「反応がやわらかくなってきた」
「声や表情に変化が出てきた」
そんな小さな“はじまり”を親子で感じられることが、このアプローチの何よりの魅力です。
今、学ぶことでできる未来の選択肢
「何か特別な資格がないとできないのでは?」「医療行為にならないか心配…」
そんな声もありますが、ご安心ください。この耳介療法は、家庭のケアとして安全に学べる内容であり、医療行為にはあたりません。大切な我が子のために、自分の手でできるケアがある――それだけで、未来の見え方が大きく変わるはずです。
「話せるようになるか」ではなく、「つながれる未来をつくっていく」そんな想いで、この方法を学びたいと思った時こそ、第一歩のチャンスです。
おわりに
子どもが話すまでの道のりはそれぞれ違います。でも、たとえ言葉が出なくても、心はしっかりとつながることができます。無理をさせず、子どもの気持ちや表現を尊重しながら、フランス式耳介療法のようなやさしいアプローチを通じて、その子の“伝えたい”を引き出すお手伝いができればと思っています。
《監修者》この記事を書いた人

田中 幸恵
一般社団法人ジャパンセラピスト検定機構代表理事
耳介療法士・心理カウンセラー・夫婦カウンセラー
国際耳介療法学会会員
耳つぼの講師
カウンセリング歴21年。
2014年に耳介療法の元祖Dr.ポール・ノジェの子息であるDr.ラファイエル・ノジェ(現在国際耳介療法学会 CEO)より直々に耳介療法を学ぶ。耳の不思議さと奥深さに魅せられ、もっと多くの方に広めたいという想いから、今まで学んでいた中国式耳つぼ療法とフランス式耳つぼ療法を融合した独自メゾット「新フランス式オリキュロセラピー」を完成。
ご家族や大切な人の健康に貢献したい方、セラピストとしてさらに結果を出したい方に「耳つぼ療法」を通してミラクルを起こすお手伝いをしている。
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